【Game Review】マイ・ベスト・ネトゲ賞

マイ・ベスト・ネトゲ 2010

「マイ・ベスト・ネトゲ賞」。

毎年一回、この時期に一年の中で一番遊んだもしくは衝撃的だったネトゲを選ぶという突発的企画です。

さて、今年も色々なネトゲをやりましたが、数あるPC・コンシューマー・アーケードゲームを押しのけて、はえある(?)第一回マイ・ベスト・ネトゲに選ばれたのはなんとブラゲ。それもMixiアプリの『ブラウザ三国志』です!

『ブラウザ三国志』はトラビアンに始まる村ゲー・・・拠点開発+戦争(戦略)ゲームの一つです。村ゲーはブラウザゲームとして開発が容易と言うこともあり、アレンジされた作品が有象無象のように出て、『ブラウザ三国志』はその中では後発とも言える作品でしたが、ある2つの点で他にない優れた特長を持っていました。

※画像は公式サイトから

一つは、戦争を面で行うものにしたこと。
従来の村ゲーは、拠点を開発しそこに資源と兵力を蓄えて、他プレイヤーの拠点を攻撃し資源を収奪するというゲームでした。戦闘は襲撃したとき、もしくは襲撃を待ち受けたときにのみ生起しました。戦闘は戦術的な工夫の余地はほとんど無く、より大きな戦力の側がかならず勝つため、いかに一点に戦力を集めるかだけが重要でした。プレイヤーが一対一で戦うならば、生産力=戦力の勝る側に劣る側が勝てる見込みはほぼありません。そのため、他のプレイヤーと協力してより大きな勢力となることが大事でした。これが戦略ゲーム、と称されるゆえんです。しかしながら、いかな戦略を弄しても、戦いが拠点という「点」で行われることに違いはありませんでした。
ブラウザ三国志では、点在する拠点と拠点との間の空間をマス目で仕切ってこれらを領地として占領できるようにしました。資源は基本的に領地から得られ、広げるには隣接地を順に攻略していく必要があり、一足飛びには相手の拠点や領地を攻撃しても占領できないようにしたのです。これにより、領地を守る戦いが生まれ、領地の境界での一進一退、攻略目標への迂回軌道、防衛戦力分散のための陽動作戦など、空間を使った戦争が可能になりました。つまり戦略のみでなく、作戦性のあるゲームにも進化したのです。

※画像は公式サイトから

もう一つは、武将の要素を持ち込んだことです。
たいていのこのタイプのゲームには様々な兵種が用意され、相性などによる戦闘の有利不利が発生するようになっています。それらの兵種は拠点の開発の進捗によって生産できるようになるのですが、一通り生産できるようになるとあとはほとんど数を増す以上、やることが無くなってしまいます。
『ブラウザ三国志』では、これに加えて武将という兵科が存在します。武将は生産性や戦力を強化する上で欠かせない存在ですが、かなりの種類があり能力の優劣もまちまちです。そしてどの武将を獲得できるかは完全にランダム。優秀な武将、状況に見合った能力を持つ武将を得られるかどうかは、全く運なのです。もちろん、どんな武将も手をかけることで能力を伸ばし、育てることが出来ます。そして時にはカードを売り飛ばしてそのポイントで他の武将を買うこともできます。手札を育てるか、優秀な武将の登場を待つか、トレードか・・・このキャラ育成+トレーディングカード的要素をもつ武将の存在が、プレイスタイルに非均一をもたらし、ゲームに良いアクセントを与えています。

このほか、携帯に対応している、クエストが充実、などいくつも美点がありますが、他の村ゲーと明らかに異なる美点を最後に一点だけ紹介します。
村ゲーは、育成ゲームの要素があるために、後からゲームを始めた人は基本的に先行しているプレイヤーより不利です。そのため、ゲームを定期的に終了再開(リセット)するようになっていたりします。それにより、新規参加を考えている人に、公平なスタートの機会を用意するというわけです。しかしこれは同時に、リセット後いちからやり直すことになるため、多くはここでゲームをやめてしまうことになります。
この『ブラウザ三国志』も例に漏れませんが、他と違うのは、「先のゲームで使っていたデータを引き継げる」こと。武将だけを、次のゲームに持ち越せるという仕組みを持っています。これは単純なリセットにくらべ、所有資産を持ち越せるという点でとても魅力的ですが、それだけではありません。
基本的に、武将の能力は軍隊の能力を高めることに大きな効果があり、個人戦闘で発揮できる戦闘力はしれています。そのため、普通は兵力を増産し、それとセットで使うことになるのですが、二回目のゲームとなると、すでに武将も育っており、ゲーム開始初期に生産できる戦力と比べて遙かに強力だったりするのです。そのため、領地の取り合いなどの攻防はかなり早い段階から生起します。しかしながら拠点の生産力が高まってくると武将のみに頼ることは出来なくなっていきます。どのあたりから軍隊の生産に本腰を入れるか、といった見極めが重要になるわけですが、こういった1ゲーム目にはない独特の展開が楽しめるのです。

ブラウザ三国志のこの仕組みは非常に面白くて、クソゲーばかりといわれていたMixiアプリの中で爆発的ヒットとなり、その後、このゲーム性をベースにした『戦国IXA』などが登場しました。
しかし、ゲームバランスや携帯対応などを考えると、ブラウザ三国志は一日の長がある気がします。
その長も来年はどうなっているか分かりませんけどね。

というわけで、第一回マイ・ベスト・ネトゲ賞でした。


2010年12月5日 ちわわん